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最終更新日:
2025-12-25

妊娠を望み妊活をしたいと感じたとき、何から取り組めばよいのでしょうか。妊活にはいくつかのステップがあり、パートナーとの気持ちや計画の共有、妊娠の仕組みの理解、排卵日の把握、医療機関での検査や予防接種の確認、生活習慣の見直しなど、備えておきたいポイントは多岐にわたります。

本記事では、妊活をはじめる段階で押さえておきたい基本事項をわかりやすく整理します。日常生活で実践できることについても解説します。

妊活をはじめるときは何からやればいい?

妊活に明確な定義はありませんが、一般的には妊娠に向けて心と体を整える取り組み全般を指します。妊娠を目的とした性交渉だけでなく、体調管理、生活習慣の見直し、医療機関での検査や相談なども含まれます。

ここでは、妊活をはじめたいと思ったとき知っておくべきことを紹介します。

パートナーと妊活について話し合う

妊活をはじめるにあたって、まずはパートナーと妊活の目標や気持ちを共有しましょう。妊娠に向けた体作りや専門的な検査・治療を進める上では、女性だけではなく男性側の協力も欠かせません。

WHO(世界保健機関)の報告によれば、不妊の原因は男性のみが24%、女性のみが41%、男女両方が24%、原因不明が11%とされており、約半数のケースに男性側の要因が関わっています。そのため、妊活では男女一緒に検査を受けたり生活習慣を見直したりすることが大切になります。

妊活への話し合いでは、「いつから本格的に妊活をはじめるか」「検査や治療の意向」「仕事や生活スタイルの調整」などを一緒に考えると良いでしょう。妊活をスムーズに進めるためにも、お互いの考えを率直に話し合う時間を設けることが大切です。

男性向けの妊活のはじめ方については以下の記事をご覧ください。

妊娠しやすい時期を知る

妊娠しやすい時期を把握しておくと、性交渉のタイミングを合わせやすくなります。妊娠しやすい時期は、卵巣で成熟した卵子が卵管に放出される排卵日とその数日前が目安です。

卵子は排卵後12〜24時間程度、特に排卵後数時間以内が受精能力が高いのに対し、射精後の精子は女性の体内で2〜3日ほど生存できます。そのため、排卵日当日だけでなく、排卵の2~3日前から性交渉をとることで、受精の成立しやすい状況を作りやすくなります2)

基礎体温と排卵日予測検査薬で排卵のタイミングを知る

基礎体温を記録しておくと、排卵の有無や排卵日の予測、黄体機能に問題があるかどうかを把握しやすくなります。基礎体温は、一般的に低温期と高温期の二相性を示し、排卵後に体温が上がるのが特徴です。

基礎体温の計測に合わせて、排卵日予測検査薬を使う方法もあります。排卵日予測検査薬は、排卵前に分泌が高まる黄体形成ホルモン(LH)の変化を調べるもので、LHサージ出現からおよそ24〜48時間で排卵が起こるといわれています3)

基礎体温と排卵日予測検査薬を併用すると、排卵のタイミングをよりつかみやすくなるでしょう。

予防接種を受ける

性感染症や風疹などの感染症の中には妊娠・出産に影響を及ぼす可能性もあるため、妊活をはじめる前に既往歴や予防接種の接種履歴を確認しておきましょう。

特に風疹は、妊娠中に感染すると胎児がウイルスの影響を受け、先天性風疹症候群を引き起こすリスクがあります。難聴、心疾患、白内障、発達の遅れなどにつながる可能性があり、妊娠前の予防接種が推奨されます。大人の風疹の症状は風邪程度のため気付かれないことも多く、広まってしまうと予防するのは困難です。妊娠中には風疹の予防接種が受けられないことに加えて、風疹ワクチン接種後は2か月間の避妊が必要とされているため、妊活を開始する時期を考慮して計画的に接種しましょう。

また、男性が気付かないうちに感染し、周囲の妊婦への感染につながることもあります。女性だけではなくパートナーも既往歴の確認や予防接種の接種歴を確認することが大切です。

ブライダルチェックを受けて体の状態を確認する

妊活をはじめる前に、自分の体の状態を知っておくことも大切です。産婦人科のある医療機関や不妊治療専門クリニックでは、妊娠に関わる検査をまとめて受けることができる「ブライダルチェック」を実施しているところもあります。

また、女性だけでなく男性側の状態を確認できる検査項目を設けている医療機関もあり、産婦人科や不妊治療専門クリニックに加えて、泌尿器科を併設している医療機関で対応している場合もあります。

ブライダルチェックとは

ブライダルチェックは、将来の妊娠や出産に影響する病気がないかを確認し、自分とパートナーの健康状態を把握するための検査です。妊活をはじめる前に受けておくと、感染症の有無や子宮・卵巣の状態、ホルモンのバランスなどがわかり、必要な対策を早めに立てることが可能です。妊娠を希望する時期に合わせて受ける方も多く、妊活に役立つ準備のひとつといえるでしょう。

なお、「ブライダルチェック」という名称は通称であり、医療機関ごとに名称や検査項目が異なる可能性があります。

ブライダルチェックの検査内容と費用

ブライダルチェックの検査内容は、医療機関のプランや希望によって異なります。一般的には、男性は血液検査や精液検査などが行われ、女性は血液検査、超音波検査、内診などが含まれます。どの検査を受けるべきか迷うときは、妊娠に関する希望や自分たちの状況を医師と相談しましょう。

ブライダルチェックは基本的に自費診療となり、費用は医療機関や検査項目によって異なりますが、女性で2〜5万円程度、男性で1〜3万円程度が目安です。検査項目を絞ることで費用を抑えることも可能なため、事前に医療機関に確認すると良いでしょう。

なお、地方自治体によっては助成制度を利用できる場合があります。

東京都では、18歳から39歳の都内在住者を対象に、プレコンセプションケアに関する検査費用の助成を行っています。「TOKYOプレコンゼミ」という無料講座を受講後、登録医療機関で検査を受けると、検査費用が男女ともに上限3万円まで助成されます。

対象となる検査には、ホルモン検査、超音波検査、精液検査などが含まれます。パートナーの有無に関わらず利用できるため、将来の妊娠・出産を考えている方は、この制度を活用して自分の体の状態を確認すると良いでしょう。

男性のブライダルチェックについて詳しくはこちらもご覧ください。

【タイプ別】妊活をはじめるときの基礎知識

妊活の進め方は、年齢や体の状態、妊娠を希望する時期によっても変わります。自然妊娠を目指す人、35歳以降で妊娠を希望する人、持病がある人では、意識したいポイントや準備が少しずつ異なります。自分の状況に合った取り組み方も知っておくと、無理なく妊活を進められるでしょう。

自然妊娠を目指す方

女性の妊娠する力は年齢とともに下がり、30歳頃からゆるやかに、35歳を過ぎるとさらに速く妊娠率が低くなります2)。40歳以降での妊娠率は急激に低下するため、自然妊娠を目指す場合でも早めに医療機関に相談するなどの準備が必要です。

自然妊娠では、生活習慣を整えることに加えて、月経周期を把握し、基礎体温や排卵検査薬を使って性交渉のタイミングをとる方法などもあります。

なお、排卵日のみにタイミングを取ることにこだわりすぎるとストレスになることがあります。排卵日に限定せず、週に2〜3回程度の定期的な性交渉を持つことも、自然な形で妊娠可能期間をカバーする方法として推奨されています。

35歳以降で妊娠を目指す方

35歳を過ぎると良好な卵子の割合が少なくなり、妊娠率の低下が加速します。流産の確率も上がるため、妊娠・出産したい時期が明確な場合は早めに医療機関を受診しましょう。

血液検査や超音波検査で卵巣の状態を確認し、必要に応じて治療を受けることで、妊娠に向けた行動を起こしやすくなります。また、気になる症状があるときも早めに相談すると安心でしょう。

妊活に関わるホルモン検査について詳しくは以下の記事をご覧ください。

持病があるが妊娠を目指す方

持病がある場合は、妊娠を考えはじめた段階で医療機関に相談しておくと安心です。病気の種類や症状、治療内容によっては妊娠に影響が出ることがあり、治療方針の調整が必要になることがあります。

また、服用している薬が胎児へ影響しないかどうかの確認も大切です。医師と体の状況を共有しながら準備を進めることで、より安全に妊娠を目指すことにつながります。

妊活をはじめるときに整えておきたい生活習慣

妊活をはじめるときは、体の土台作りとして生活習慣を見直しておくと、妊娠に向けた準備が進めやすくなります。

食事、禁煙、運動といった基本的な生活習慣の見直しは男女共通です。さらに、女性は月経の状態を知ること、男性は精巣を労る生活を意識すると、より妊娠しやすい環境につながりやすくなります。

男女共通|食事・禁煙・運動

妊娠を目指すときは、男女ともに日々の生活習慣を整えることが大切です。

食事は栄養バランスを意識し、女性は特に葉酸を妊娠の1か月以上前から摂取することが推奨されています。厚生労働省は食事に加えてサプリメントなどで1日400μgの葉酸摂取を推奨しています。また、鉄分やカルシウム、ビタミンC,D,Eなども積極的に摂取しましょう。

男性も、精子形成に重要な亜鉛を含む食品(牡蠣、レバー、ナッツ類など)を意識的に摂取し、全体としてバランスのよい食事を心がけてください。

喫煙は胎児・子どもの発育に大きな悪影響を及すだけでなく、不妊の原因にもなります。さらに男性ではED(勃起不全)の危険因子としても知られています。妊活をはじめる場合は男女ともに禁煙が必要です。

また、適度に運動することで血流が良くなり、ストレス解消や体重の管理にも役立ちます。

女性|強い月経痛や月経不順を放置しない

強い月経痛や月経不順が続く場合、子宮内膜症や排卵に関わるトラブルなど、妊娠に影響する疾患が隠れている可能性があります。そのような疾患の中には、治療をせずに放置すると将来的に妊娠しにくくなるケースもあるため注意が必要です。

気になる症状がある場合は、妊活をはじめる前に医療機関で相談しておくと安心です。自分の体の特徴や状態を正確に把握することが、妊娠に向けた大切な準備のひとつになります。

男性|精巣を温めすぎない

精子は高温に弱く、精巣が温まりすぎると精子の質が低下する可能性があります。そのため、日常的に精巣の温度が上がりやすい行動には注意が必要です。

例えば、サウナや岩盤浴、長時間の入浴を頻繁に行うと、精巣の温度が上がりやすくなります。妊活中は、入浴時間やサウナ・岩盤浴の利用頻度を調整すると良いでしょう。

また、生活習慣の中にも、精巣に熱がこもる原因が潜んでいます。以下のような習慣は、熱がこもりやすく精子形成に影響を与えるおそれがあります。

  • 太ももの上にノートパソコンを置いたまま作業する
  • 締め付けの強い下着を日常的に着用する
  • 電気毛布を長時間使う など

良い精子の状態を保つためにも、日々の生活の中で精巣に熱がこもるような行動は避けましょう。

妊活がうまくいかないときは医療機関で相談を

定期的に性交渉を行っているにもかかわらず、1年間妊娠しない場合は「不妊症」と定義されています。不妊の原因は女性側、男性側、男女双方にある場合があり、どちらか一方だけの問題とは限りません。妊活をはじめてから一定期間を経過しても妊娠しないときは、早めに医療機関に相談しましょう。

ただし、女性が35歳以上の場合は6か月間妊娠しなければ受診が推奨され、40歳以上の場合は妊活開始と同時に医療機関への相談が推奨されます。年齢とともに妊娠率が低下し、治療への反応も変化するため、早めの行動が重要です。

医療機関で不妊症と診断された場合、治療の選択肢として、以下のようなものがあります。

治療法 内容
タイミング法 排卵日を予測して、妊娠しやすい時期に性交渉を行う方法
人工授精 排卵のタイミングに合わせて、精子を子宮内に人工的に注入する方法
体外受精(c-IVF) 採卵した卵子を培養液で精子と自然に受精させ、成長した胚を子宮に戻す方法
顕微授精(ICSI) 採卵した卵子に、1つの精子を直接注入して受精させる方法

どの治療法を選ぶかは、夫婦の症状や年齢などによって変わるため、医師と相談しながら進めることが大切です。

院長からのメッセージ

妊活を始めようと思っても、何から手をつければいいか迷う方は多いものです。

私がまずお勧めするのは、ブライダルチェックなどで「お二人の現在地」を確認することです。問題がなければ安心材料になりますし、何か見つかれば早めに対策を立てられます。東京都には最大3万円の助成制度もあります。

「将来のための健康診断」くらいの気持ちで、まずは気軽に検査を受けてみてください。その結果をもとに、「目的地までの最短のルート」を一緒に探しましょう。

参考文献

1)こども家庭庁.妊娠・不妊の基礎知識|不妊のこと DICTIONARY
https://funin-fuiku.cfa.go.jp/dictionary/theme05/#sec03

2)一般社団法人 日本生殖医学会.生殖医療Q&A 2025
http://www.jsrm.or.jp/public/document/seishoku_qa_2025.pdf

3)公益社団法人 日本産婦人科医会.4.排卵の予測
https://www.jaog.or.jp/lecture/4-%E6%8E%92%E5%8D%B5%E3%81%AE%E4%BA%88%E6%B8%AC/

4)公益社団法人 日本産婦人科医会.9.タイミング
https://www.jaog.or.jp/lecture/9%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0/

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