妊娠しやすい時期は、排卵日の1~2日前から排卵日当日が目安となります。この時期に性交渉をもつことで妊娠する可能性が高まります。
本記事では、生理周期と排卵のメカニズムや排卵日の予測方法などを詳しく解説します。妊娠に備えた生活習慣の整え方や専門家へ相談するタイミングについても紹介します。
妊娠しやすい時期はいつ?
妊娠の確率をあげるためには、妊娠しやすい時期を逃さないことが重要です。妊娠の可能性が高まる具体的な時期について解説します。
妊娠しやすいのは排卵日の数日前から排卵日当日
妊娠しやすい時期は、排卵日の数日前から排卵日当日が目安となります。特に、排卵日の1〜2日前から性交渉をもつことで妊娠の可能性が高くなるといわれています。
卵子は排卵後12〜24時間程度、特に排卵後数時間以内が受精能力が高いのに対し、精子は女性の体内で2〜3日受精能力を保てるためです。精子が女性の体内で卵子を待つようなイメージになります。
排卵日とは
排卵日とは、卵巣の中で成熟した卵子が放出される日のことです。排卵によって卵子は卵巣から放出されて卵管に入り、卵管内で精子と出会うことで受精が成立します。
排卵日は一般的に生理予定日の約14日前にあたります。排卵日の5日前から妊娠の可能性があり、排卵2日前から排卵日当日が最も妊娠率が高くなります。自分自身の生理周期を把握して、タイミングをみて性交渉することが大切です。
生理周期には個人差があり、一般的に28日前後、医学的には25~38日が正常範囲とされています。また、体調やストレスによっても、生理周期が数日ずれることもあります。しかし、生理周期に変動があっても、排卵から生理までの時期である黄体期は約14日間でほぼ一定です。
生理周期の仕組み
生理周期は、卵胞期・排卵期・黄体期にわかれ、ホルモンの作用によって各時期で卵巣や子宮の状態が変化します。
各時期の特徴と体内で起こる変化について解説します。
卵胞期
卵胞期とは、生理がはじまってから排卵が起こるまでの期間のことです。
生理の時には卵巣の中に複数の未熟な卵胞があり、卵胞の中に卵子が1つずつ入っています。脳下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)の働きによって卵胞と卵子が育ちます。
卵胞からはエストロゲンというホルモンが分泌されており、エストロゲンの作用によって子宮内膜が徐々に厚くなって受精卵を迎え入れる準備が進みます。
排卵期
排卵期とは、卵巣で成熟した卵子が卵胞から放出される時期です。
卵胞期の後半になると成熟した卵胞からのエストロゲンの分泌が増加し、エストロゲンが一定のボーダーラインを超えると、排卵のきっかけとなるLH(黄体形成ホルモン)が大量に放出されます。LHが急増する減少をLHサージといい、この刺激によって排卵が起こります。
精子が女性の体内で2〜3日間生存できるのに対し、卵子が受精可能な時間は最長でも24時間程度と限られています。生理周期の各期のなかで、この排卵期が妊娠しやすい時期といえるでしょう。
黄体期
黄体期とは、排卵が起こった後に次の生理がはじまるまでの期間のことです。
排卵後、卵子が放出された卵胞は黄体へと変化し、プロゲステロンを分泌しはじめます。プロゲステロンの分泌量は黄体期の中ごろにピークを迎え、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を成熟させて整えます。
妊娠が成立した場合、プロゲステロンの量は維持されますが、妊娠しなかった場合は黄体が退縮するのにともなってプロゲステロンの量が減少し、子宮内膜が剥がれ落ちて生理がはじまります。黄体が退縮するまでの期間は個人差が少ないため、排卵から生理までの黄体期の期間はほぼ14日間で一定となります。
排卵日の予測方法
排卵日を予測する方法として、基礎体温の測定や排卵日予測検査薬の活用、おりものの観察などがあります。これらは自宅でできる検査方法です。さらに詳しく調べたい場合は医療機関で超音波検査などを受けることが可能です。
ここでは、自宅でできる排卵日の調べ方について解説します。
生理予定日から逆算する
排卵日は生理日の約14日前でほぼ一定です。そのため、月経周期が整っている人であれば、次回の生理予定日から14日を引くことで排卵日を予測することができます。
生理予定日は、毎回の生理開始日を記録してその周期を確認することで計算が可能です。
基礎体温を測定する
基礎体温とは、夜間の睡眠後や起床直後など、身体が完全に休息状態にあるときの体温を指します。排卵後は体温が上昇するため、基礎体温を測定することによって排卵しているかどうかを知ることができます。
ただし、基礎体温の上昇は排卵後に起こるため、基礎体温の測定のみで、その周期の排卵を予測することはできません。2~3周期の記録を取ることによって、排卵の有無や時期を知り、自分の生理周期を把握することが基礎体温測定の目的となります。
基礎体温の正確な測定には、小数点以下二桁まで測れる婦人体温計が必要です。
朝目覚めたら体を起こす前に婦人体温計の感温部を舌の裏側のつけ根にあてて、舌で押さえながら口を閉じたまま測定してください。あらかじめ枕元に婦人体温計を準備しておくと、起床後すぐに測定することができ便利です。毎日測定して記録を続けることで、体のリズムの把握にもつながります。
排卵日予測検査薬を活用する
排卵日予測検査薬は、スティック状の検査薬に尿をかけることで排卵日を予測できるものです。LHサージ(排卵前に体内でLHが急増する現象)を検出することで、排卵の約1日前を予測することが可能です。
排卵予定日の数日前から排卵日予測検査薬を使用し、陽性を示すタイミングで性交渉をもつことで妊娠の可能性を高めることにつながります。
おりものを観察する
おりもの(頸管粘液:けいかんねんえき)は生理周期によって性質が変わる特徴があります。排卵日が近づくとエストロゲンの作用によっておりものの量が増え、透明で水分を多く含み、よく伸びる状態へ変化します。
ただし、おりものの状態だけで排卵日を正確に定めることは難しいため、基礎体温の測定や排卵日予測検査薬の使用と並行するとよいでしょう。
より正確に知りたい場合は医療機関を受診する
より正確に排卵日を把握したい場合は、医療機関を受診しましょう。経腟超音波検査によって卵胞の大きさを測定することでより正確な排卵日の予測が可能になります。加えて、血液検査でホルモン値を測定することでも、より詳細な情報を得ることができます。
排卵検査薬で知ることができるのは排卵1日前ですが、妊娠しやすい時期は排卵の2日前からです。超音波検査では排卵日の数日前からの予測が可能となるため、妊娠する可能性を高めたい場合には医療機関を受診するとよいでしょう。
医療機関では医師による総合的な判断のもと、妊娠しやすいタイミングについて具体的な指導を受けることが可能です。
妊娠に備えた生活習慣の整え方
妊娠するためには、バランスの取れた食事摂取やストレスの管理、適度な運動や睡眠なども心がけたいポイントです。飲酒や喫煙の習慣がある場合は、禁酒や禁煙が推奨されます。
ここでは妊娠に向けて意識したい具体的な生活習慣について解説します。
バランスのよい食事を摂る
妊娠に備えるうえで、栄養バランスが整っている食事の摂取は大きなポイントです。特に、葉酸は胎児の神経系の発達について重要な役割をもっており、妊娠の1ヶ月以上前から意識して摂取することで、先天的な疾患の予防につながることが知られています。
葉酸はほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、納豆、いちごなどに多く含まれている栄養素です。厚生労働省では、妊娠を計画している女性や妊娠初期の女性に対して、食事に加えてサプリメントなどで葉酸を1日400μg摂取することを推奨しています。
また、鉄分やたんぱく質、ビタミンなども体の基礎を作る大切な栄養素であるため、1日3食をバランスよく食べることを心がけ、不足している場合には必要に応じてサプリメントなどで補充しましょう。
ストレスを管理する
体にストレスがかかるとホルモンバランスが乱れ、妊娠に影響を及ぼすおそれがあります。妊活中はストレスをうまく管理することが大切です。趣味の時間を設けたり深呼吸や瞑想によってリラクゼーションを図ったりするとよいでしょう。
また、悩みや不安を感じたときは信頼できる人に話を聞いてもらうこともストレスのコントロールにつながります。自身に合ったリフレッシュ方法を見つけておくことで、妊活中の負担を軽減できます。
適度に運動し良質な睡眠を取る
妊娠に向けた体づくりとして、適度な運動を取り入れることが推奨されています。ウォーキングやヨガ、ストレッチなど無理なく続けられるものを選ぶことが大切です。
また、良質な睡眠によって心や体を休めることは、ホルモンの分泌を整えることにつながります。夜は早めに就寝し、朝は同じ時間に起きるなど生活リズムを整えることを意識しましょう。
喫煙や過度な飲酒を控える
喫煙は、がんや心臓病などの病気を引き起こすだけでなく、不妊症のリスクを増加させ、妊娠後も周産期合併症を増加させることが知られています。また、女性の場合は胎児の発育障害や先天異常の増加につながるため、妊活前に禁煙することが必要です。男性の場合、喫煙により精子の濃度や運動率が低下し奇形率が上昇するため、妊娠しづらくなることにもつながります。
アルコールについては、妊娠前の摂取量や摂取期間が、妊娠に影響するかどうかは明らかになっていません。しかし、妊娠中の飲酒は流産や死産、胎児性アルコール症候群の原因となります。妊娠後の授乳期のことも想定し、妊娠前からアルコールを控えるのが望ましいといえるでしょう。
妊活で医療機関を受診するタイミング
妊活をはじめてから、一定期間を過ぎても妊娠しない場合は医療機関へ相談することを検討しましょう。
日本産科婦人科学会では、「妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交していたにもかかわらず、1年間妊娠しない場合」を不妊症と定義しています。2)医療機関では妊娠しにくい原因を調べるためのさまざまな検査を受けることが可能です。
ただし、年齢や状態によっては、より早期に検査や治療を開始した方が良い場合もあります。特に女性の年齢は妊娠のしやすさに大きく影響し、年齢とともに自然に妊娠する可能性は低くなります。
ASRM(米国生殖医学会)やESHRE(欧州生殖医学会)のガイドラインでは、35歳以上では6か月以上妊娠しない場合に、40歳以上では妊娠したいと思ったらすぐに、不妊治療の医療機関を受診することが推奨されています。
その他、生理不順や重い月経痛、子宮内膜症がある場合や、手術歴や感染症の既往がある場合には、早めの受診が推奨されます。
院長からのメッセージ
「排卵日当日じゃないとダメ」と思い込んでいる方が意外と多いのですが、実は排卵の1〜2日前の方が妊娠率は高いのです。
精子は女性の体内で2〜3日間生存できますから、排卵日当日だけにこだわる必要はありません。むしろ、排卵期に週2〜3回程度、自然な形で性交渉を持つ方が、ストレスも少なく良い結果につながることが多いと感じています。
カレンダーや検査薬に振り回されすぎず、お二人の気持ちとペースを大切にしてください。
参考文献
1)日本産科婦人科学会. 2023年体外受精・胚移植等の臨床実施成績. 日本産科婦人科学会ウェブサイト
https://www.jsog.or.jp/activity/art/2023_JSOG-ART.pdf
2)日本産科婦人科学会. 不妊症. 日本産科婦人科学会ウェブサイト
https://www.jsog.or.jp/citizen/5718/

