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最終更新日:
2025-12-25

結婚や妊活を考え始めたとき、男性もブライダルチェックを受けるべきか、費用がどれくらいか気になる方は多いでしょう。男性のブライダルチェックは、基本的には自費で受ける検査です。

ただし、1年以上妊娠せずに不妊症が疑われる状況や性感染症の症状がある場合など、医師が診断に必要と判断すれば保険適用で検査を受けられる場合もあります。

WHO(世界保健機関)の調査では、不妊カップルの約半数に男性側の要因が関わっていることが明らかになっており、ブライダルチェックを受ける男性は年々増えています。将来の妊娠に備えてパートナーと一緒に現在の自分の状態を把握することは、誰にとっても大切なステップです。

この記事では、男性ブライダルチェックの保険適用、費用助成制度、検査内容を整理して解説します。

男性のブライダルチェックとは?

男性ブライダルチェックとは、結婚や妊活を希望する男性が自身の生殖機能や健康状態を確認するための検査です。結婚前や妊活開始前に受けることが一般的ですが、いつでも受けることができます。

男性のブライダルチェックでは、主に「生殖機能」と「性感染症」の2つの側面から評価を行います。妊娠の妨げとなる要因がないか、パートナーに感染を広げる可能性がないかを確認することで、将来の妊娠・出産に向けた安心材料になります。

ブライダルチェックの受診の流れは、予約後に検査を実施し、当日または後日、医師から結果説明を受けます。多くの場合、1〜2回の通院で完了します。

男性のブライダルチェックは基本的に保険適用外

男性のブライダルチェックは、結婚前や妊活前の予防的な健康確認を目的としているため、健康保険の適用外(自費診療)になります。

厚生労働省の定める保険診療の基準において、疾病の予防や健康増進を目的とした健康診断・検査は原則として保険適用の対象外とされているためです1)

ブライダルチェックは、人間ドックや健康診断と同じく将来の妊娠に備えた健康管理のひとつとして行われるため、保険の対象には含まれません。

例外的に保険適用になるケース

一方で、同じ検査内容でも次のような場合には、医師の判断により保険適用で検査が行われることがあります。

  • 排尿時の痛みや分泌物など、性感染症の症状がある
  • 既往歴や診察所見から、医師が診断に必要と判断した検査を行う

また、自費でブライダルチェックを受けて異常が発見された場合、その後の診療については保険適用となる可能性があります。検査の結果として医師が医学的に治療や精密検査の必要性を認めた場合、その後の検査・治療が保険診療に切り替わります。

どこまでが自費で、どこから保険診療になるかは個々の状態によって異なるため、気になる場合は受診前に医療機関に相談してみるとよいでしょう。

男性ブライダルチェックの費用

男性ブライダルチェックの費用は、検査項目によって幅があります。性感染症のスクリーニングのみの検査から、精液検査やホルモン検査などを含む包括的な検査まで、医療機関によって様々な選択肢が用意されています。

医療機関によっては、男女ペアで受けることで割引が適用される場合や、初診料や再診料が別途発生する場合もあります。

具体的な費用については、受診を希望する医療機関に確認してください。

男性ブライダルチェックの助成金について

一部の自治体では、結婚前の健康診断や不妊検査に対する助成金制度を設けています。

助成の目的は、少子化対策や母子保健の向上、妊娠前の健康管理の推進などで、対象年齢・助成額・申請条件は自治体によって大きく異なります。

助成金の利用にあたって、次の点を事前に確認しておくことが重要です。

  • 事前申請が必要か、事後申請が可能か
  • 指定医療機関での受診が必須かどうか
  • 対象となる検査の範囲(精液検査、血液検査など)
  • 助成の上限額や年齢制限の有無

これらの条件は自治体により細かく異なるため、受診前に必ず自治体の公式ホームページや窓口で最新情報を確認してください。

また、自治体によっては「妊活支援」「結婚支援」「不妊検査助成」「プレコンセプションケア」という名称で制度が設けられていることもあり、ブライダルチェックの費用の一部が助成対象となることがあります。

助成金を利用できれば、経済的負担を抑えながらブライダルチェックを受けられる可能性があります。まずは、住んでいる自治体が実施している制度を調べてみるとよいでしょう。

男性のブライダルチェックの主な検査内容

男性のブライダルチェックの検査項目は医療機関によって異なりますが、基本的なスクリーニングから詳細な検査まで選択できます。

主な検査は、問診・血液検査・尿検査・精液検査です。いずれも妊娠に影響する要因や感染症の有無を確認するうえで重要になる検査です。

検査項目 検査方法 検査内容・目的
問診 医師との面談 既往歴・生活習慣・症状を確認する。必要な検査の選択に役立つ。
血液検査 採血 性感染症、ホルモン値、全身状態を確認する。妊娠への影響を評価する。
尿検査  採尿 性感染症や尿路の異常を確認する。無症状でも感染がある場合がある。
精液検査 採精室で採取または自宅採取 精子数・運動率・形態を評価し、造精機能に問題がないかを確認する。

生殖機能に関する検査

男性ブライダルチェックの中心となるのが精液検査です。精液検査では、精液量、精子濃度、運動率、正常形態率などを確認し、精子を作る能力に問題がないかを確認します。

精子の状態は体調やストレスの影響を受けやすく、数値が日によって変動することも多いため、必要に応じて複数回の検査を行う場合があります。

WHO(世界保健機関)は、精液検査について具体的な基準値として、精液量1.4mL以上、精子濃度1,600万/mL以上、総運動率42%以上などを定めています2)

これらの値は、あくまで自然妊娠に至った男性のデータの下位5%に基づく目安です。つまり、WHO基準値は「この値を下回ると妊娠できない」という絶対的な基準ではなく、「自然妊娠に至った男性の95%はこの値以上だった」という統計的な目安です。基準値を下回る場合でも妊娠しているケースがある一方で、基準値を満たしていても妊娠に時間がかかる場合もあります。

精液検査の前には2~7日程度の禁欲期間がWHOにて推奨されています。この禁欲期間はあくまで検査の標準化のための期間であり、日常的な妊活では禁欲期間をあまり長くしすぎない方が良いとされています。

性感染症に関する検査

性感染症(STI)の検査も、男性ブライダルチェックにおいて重要な役割を担います。

性感染症は自覚症状がないまま進行することが多く、放置すると男女ともに不妊の原因となる可能性があります。また、知らないうちにパートナーへ感染させてしまうリスクもあります。

例えば、男性では、クラミジアや淋菌感染が精巣上体炎を引き起こし、精子の通り道(精管)を閉塞させることがあります。女性では、これらの感染症が卵管炎を引き起こし、卵管閉塞や子宮外妊娠のリスクを高めます。また、妊娠中の感染は母子感染のリスクもあります。

主に検査される感染症は次のとおりで、血液検査または尿検査で調べます。

  • クラミジア
  • 淋菌
  • 梅毒
  • HIV
  • B型肝炎
  • C型肝炎
  • HITLV-1

性感染症は早期に発見し治療を開始することで、不妊リスク・母子感染リスクを低減できます。症状がなくても、パートナーの健康を守る目的で検査を受けることが推奨されます。

男性ブライダルチェックが受けられる場所

男性のブライダルチェックは、次のような医療機関で受けることができます。

  • 泌尿器科(男性不妊専門外来を含む):男性の生殖機能を専門とする診療科で、精液検査や男性不妊の評価に精通した医師が多く在籍しています。
  • 産婦人科・不妊治療クリニック:男女双方の妊娠に関わる検査をまとめて受けられるため、パートナーと同時に受診しやすいという利点があります。

近年は、医療機関内で「男性のブライダルチェック」や「妊活チェック」などの自費診療の検査プランを用意しているケースも増えています。

クリニックを選ぶ際は、以下の点を確認すると安心です。

  • 実施されている検査項目(精液検査・性感染症検査・ホルモン検査など)
  • 検査費用と追加料金の有無
  • オンライン予約の可否
  • プライバシーに配慮した環境かどうか

なお、郵送検査キットは医療機関以外のサービスであるため診断行為ができず、ブライダルチェックの代わりにはなりません。郵送キットで得られるのは検査データのみで、その結果に対する医学的な評価や対応の提案は含まれていません。異常が見つかった場合や妊娠を希望される場合は、必ず医療機関を受診してください。

院長からのメッセージ

「パートナーがブライダルチェックを受けるなら、自分も受けた方がいいのかな」——そう迷っている方も多いと思います。正直、妊娠・出産は女性の方が身近に感じやすいテーマかもしれませんね。 

ただ、WHO調査では不妊カップルの約半数に男性側の要因が関わっています。精子の数や運動率の問題、性感染症の無症状感染など、自覚症状がなくても妊娠に影響する要因は意外と多いのです。

男性のブライダルチェックは、精液検査と血液検査が中心で、多くの場合1〜2回の通院で完了します。検査自体も決して大変なものではありません。費用は基本的には自費診療ですが、一部の自治体では助成金制度もあります。

「自分は大丈夫だろう」と思っていても、検査で問題が見つかれば早期に対応できますし、問題がなければ安心して次のステップに進めます。お互いの健康状態を確認し合っておくことで、より前向きに妊活に臨めるのではないでしょうか。

参考文献

1)厚生労働省.国民医療費の範囲.厚生労働省ウェブサイト.
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/21/dl/kokumin_hani.pdf

2)日本産婦人科医会
https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%883%EF%BC%89%E7%94%B7%E6%80%A7%E4%B8%8D%E5%A6%8A%E7%97%87%E3%81%AE%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E3%83%BB%E8%A8%BA%E6%96%AD/

こども家庭庁.男性不妊について.みんなで知ろう、不妊症不育症のこと
https://funin-fuiku.cfa.go.jp/dictionary/theme06/

東京都福祉局.プレコンセプションケア.東京都福祉局ウェブサイト.
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/preconceptioncare

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